先日夕食をとるのが遅くなってしまい近所のめぼしい店も閉店時間という頃、最近ひとに教わった深夜営業の中華屋へ入った。
ま、メニューがラーメンや餃子、麻婆豆腐にチャーハンとかなので中華屋、と表現したが看板には 「居酒屋」 とある。 朝5時までやっていて近隣の飲屋客のシメの一杯や飲食店で働く人が仕事後にいく店であるからお世辞にも上品とは言えない店構えではある。
客はウチの夫婦ひと組だけ。 餃子に手羽先揚げ、麻婆豆腐でビールを飲んだ後、ラーメンで仕上げた。 そこの女将さんはそれこそあまり行儀の良いとは言えない客も毎日相手してるだろうに、注文の受け答え等は丁寧で、慌てて食器をガラガラガッシャーンとやってしまった時には 「いっけない」 という表情でウチのヨメと目を合わせウフフと笑っていた。
ちょっと独特の味は私たち好みで大変満足して店を出た。 気分がいいのでそのまた近所のBARでもう1杯ひっかけて帰った。
その帰り道に先ほどの中華屋の前を通ると、アタマもヒゲもぼっさぼさ、汚れた服を着てニヤニヤしている初老男性が店の出口を出て縄のれんをくぐろうとしているが様子がおかしい。 よく見ると男性のすぐ後ろにさっきニコニコ対応してくれた女将さんがいる。
どうやらその男は店で何やら粗相をしたらしく、女将さんに店をたたき出される瞬間だったのだ。 札付きの酔っぱらいなのか、初めての客かは知らないがあの丁寧だった女将さんが鬼の形相で漫画のように男の襟首をつかんで文字通り男をつまみ出した。
女将さんは男の襟足から透明のビニール傘を背中と服の間に挿入して 「出てけ」 とばかりに背中を押した。 男はそうされているのが気持ちいいかのようなゴキゲンな表情で店を出て歩き出す。 傘を背中に刺したままで。 その傘のフックの丸みが男のアタマのすぐ上に来ていて、まるで男の頭上に 「?」 が浮かんでいるようですごく面白かった。 何で追い出されたのかホントにわかってないんだろうな。